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●ガスタービンとは?

 気体を圧縮機で連続的に圧縮し,燃焼器(あるいは加熱器)で高温高圧にして、タービンで膨張させて、 加えた熱エネルギーから動力(発電など)、推力(ジェットエンジン)、時には圧縮空気の形で取り出す機械をガスタービンといいます。

 らくだは灼熱の砂漠にあっても、ほとんど水無しで過ごせます。 また鳥は膀胱が無く、重くなるためあまり水を飲みません。とくに渡り鳥は中継地を除けば水無しで海や砂漠を飛び超えます(図1)。

 自動車用エンジンや発電用ディーゼルエンジンなどの往復動エンジンの大部分は、過熱するのを防ぐため、 冷却水を用いてエンジンを冷やしていますが、ガスタービンは、らくだや渡り鳥のように、厳しい環境の中でも水無しで運転できます。 このため、ガスタービンは火力発電所においてはもちろんのこと、震災時あるいは砂漠や水が凍る寒い場所での発電にも非常に役立ちます。 発電のほかにも、水中翼船、ポンプや圧縮機などの駆動エンジンとして使われます。

 またガスタービンは鳥のように軽量ですので、ジェットエンジンなどの航空機の推進エンジンや移動電源車などに使われています。

 他の特徴としては、小型で高出力、振動が少ない、起動が速いなどがあります。騒音は高周波音であるため、比較的消音しやすいです。


図1 水が長時間無くても耐えられる動物
 


●ガスタービンの原理

 図2に示しますように、まず左側から空気を取り入れ、これを圧縮機で圧縮して高圧にします。 次に燃料を加えて燃焼器で高温高圧の燃焼ガスを作ります。

 燃焼ガスのエネルギーのうち圧縮機をまわすのに必要な分だけを膨張仕事としてタービンで取り出し、 残りのエネルギーを、推力を得るためのジェットの運動エネルギーとして利用するのがジェットエンジンです(図2(a))。 また、燃焼ガスのエネルギーのうちできるだけ多くを膨張仕事としてタービンで取り出し、 圧縮に必要な仕事を差し引いた分を動力として利用するのが産業用ガスタービンです(図2(b))。
また大きな圧縮機を使い、その出口から高圧の圧縮空気を取り出し空気源として使う場合もあります。


図2 ジェットエンジンと産業用ガスタービン
 


● 産業用ガスタービンとジェットエンジンは双子の兄弟!!

 産業用ガスタービンとジェットエンジンは、その主要な部分である図2のロータAが同じであるため、 ジェットエンジンは産業用にも転用出来て、航空転用形ガスタービンと呼ばれ、軽量であるなどの特徴を持っています。 一方、最初から産業用として開発されてきたものは重構造形ガスタービンと呼ばれて発電容量が大きいなどの特徴を持っています。 このように、ジェットエンジンと産業用ガスタービンは双子と考えてもよいかもしれません。 一人は息を使って風船を膨らませてその圧力で風船を飛ばして遊ぶ子供、もう一人は息で"かざぐるま"を回して 遊ぶ子供を想像すれば理解しやすいでしょう。
  以下は主として産業用ガスタービンについて述べます。





●ガスタービンと蒸気タービンは相性の良い兄弟!!

ガスタービンは蒸気タービンより遅れて実用化されました。 ガスタービンは空気を作動流体にして圧力を上げるのに圧縮機を使い、燃焼ガスでタービンを回します。 一方蒸気タービンは、水を作動流体にして圧力を上げるのにポンプを使い、蒸気でタービンを回します。 タービン同士は気相で使うため似た羽根形状をしていて、専門家でないとなかなか区別ができません。 液相から気相に変わる兄と、気相であり続ける弟を、それぞれ蒸気タービン、ガスタービンにたとえてよいかもしれません。

 ガスタービンと蒸気タービンの両方を使う発電が注目されています。 ガスタービンの排熱温度は約550℃で、蒸気タービンの入口温度の最適温度にほぼ合致しますので、 組み合わせて使えば効率の良い発電が行えます。この兄は、弟の使い古しの物を無駄なく使うという、弟思いの兄です。 この兄弟の連携による発電はコンバインド発電と呼ばれ、最新の火力発電所では50%以上の熱効率を得ています。


● 高温化と損失低減への挑戦

 ガスタービンは、現在では発電用、航空用などいろいろな分野でたくさん使われていますが、 これまでの開発は、多くの機械の開発と同じような地道な技術開発の積み重ねでした。

 ガスタービンでは、タービン仕事を100%とすると圧縮機仕事は概略60%(小型ではもっと大きくなる)、 残りの40%が有効に取り出せる仕事になります。一方蒸気タービンでは、給水ポンプの仕事は2〜3%しかありませんので、 両者を比較すると、ガスタービンの圧縮機仕事が非常に大きいことがわかります。

 図3に示しますように、圧縮機を回す仕事が大きいため正味仕事は、タービン入口温度とタービン効率、 とくに圧縮機の効率の変化の影響を大きく受けます。これらの値が高いと正味仕事が大きく増え、熱効率が大きく上がり、 低いと大きく下がります。

 最初にガスタービンが開発された頃は、高温に耐える材料が無いため、タービン入口温度が上げられず、 また流体工学も進歩していなかったため、流れの損失が大きく、圧縮機効率、タービン効率が悪く、 圧縮機を回すだけにタービン仕事が費やされ、正味仕事を得るのは大変なことでした。 これがガスタービンの開発を遅れさせたといわれております。

 昭和3年(1929年)発行の内燃機関の本(山下誠太郎著)をみると、当時の様子を垣間見ることができます。 それによると、"瓦斯(ガス)タービン"の熱効率は最高記録13%であり、圧縮機の効率が上がらない、 高温に耐える強度のある材料がない、羽根を冷却する手段がむずかしいなどのために、 この機械の前途に関する学者の見解は悲観的であるように見受けられると記述されています。 熱機関の理論熱効率は、高熱源と低熱源の温度で決まり、高熱源の温度が高いほどよいのです。 実際の熱効率は、理論熱効率より気体の流れの損失が差し引かれます。

 上記の本の記述でわかりますように、ガスタービンの開発の歴史は、高温化と流体性能向上への挑戦の歴史です。 1939年に世界最初の商用の4000kW発電用ガスタービンがスイスで運転され、またドイツで最初のジェット機が飛び、 これより本格的な開発が始まったのです。このときの発電用ガスタービンの入口温度は548℃でした。

 現在のガスタービン入口温度は1000℃を超え、1500℃に達するものがあります。地球温暖化防止のために、 熱効率を更に上げて炭酸ガスの排出を減らすべく、1500℃から1700℃に上げる研究が始まっています。材料、 空冷技術の開発や流体性能の向上はもちろんのこと、燃焼温度を上げるとNOx(窒素酸化物)が急激に増えて、 この対策が必要になります。まだまだ挑戦が続きます。



図3 正味仕事
 


● 材料および冷却技術の最先端

 往復動エンジンでは、シリンダー内で爆発時に高温になり、吸気時に冷やされますが、ガスタービンエンジンは連続流れのため、 常時燃焼器やタービンは高温に曝されます。したがって、高温化と共に材料が耐えられなくなり、 とくにタービン部は回転するため遠心応力が作用し、強度が持ちません。耐熱材料としては、 燃焼器とタービンでは金属系のニッケル基合金、コバルト基合金などの金属が主として用いられています。 現在の耐熱合金の耐用温度の最高レベルは約1100℃で耐久試験などのデータの蓄積が行われています。

 図4は、タービン入口温度の変遷を示しています。現在ガスタービンのタービン入口温度は最高約1500℃で使われていて、 この温度に耐える金属は現在ありません。このため900℃ぐらいから高温部では冷却技術や遮熱技術が使われます。 鳥は気嚢(きのう)という空気の袋をたくさん備えており、袋に入れた新鮮な空気をたえず肺に供給して呼吸の効率を高めていますが、 飛んでいるとき発生する熱を、気嚢を使って冷やし、この熱を外気に捨てています。らくだのコブは、中身は脂肪であり、食べるものが無いと きのエネルギー源となりますが、日射の強い砂漠などでは遮熱効果があります。

 ガスタービンも同じようなことを行っています。図5は代表的な例であり、(a)(b)は空気で冷却する方法を示しております。 翼の内部を冷却する方法と、内部から翼の外に空気を吹き出し、空気の膜を作り、翼を熱から守る方法です。 (c)の図は、翼の表面にセラミックスなどをコーティング(被覆)して、翼の材料を高温から守っています。 翼と同じような冷却や遮熱コーティングは燃焼器にも使われています。1500℃級のガスタービンでは、 蒸気が空気に比べて冷却性能が良いため、翼や燃焼器の冷却に蒸気を使用し、その蒸気を蒸気タービンで利用しています。 しかし本来は、無冷却が望ましく、セラミックスなど非金属の開発も行われています。 また、圧縮機の材料はアルミニウム合金やチタン合金などが使われています。



図4 タービン入口温度の推移(産業用)
 
図5 翼冷却と遮熱コーティング
 


● ガスタービンの流れ

 流体力学には(速度エネルギー)+(圧力エネルギー)=一定である、というベルヌイーの定理があり、 これは流れの速度が小さくなると圧力が上がり、速度が大きくなると圧力が下がるということです。 圧縮機では、回転で与えられる速度エネルギーを、流れを減速して圧力エネルギーに変換します。 この場合、減速の割合を大きくすると、流れは圧力に抗することができず、流れが翼表面で剥離して思うように圧力は上がりません。 このため段(多数の翼から成る動翼と静翼の組み合わせ)を増やし流れの減速の割合を減らし、少しずつ圧力を上げていきます。

 図2に示しますように、空気は左から右に流れて徐々に圧縮され、流路が狭まっていきます。 圧縮機を出た高圧の空気は燃焼器で高温になり、次にタービンに入ります。 タービンでは、高圧の燃焼ガスを膨張させて流れを増速させ、この速度エネルギーをタービンの回転エネルギーに変換します。 流れを増速すると圧力が下がるため、安定に流れ、膨張の割合を大きくしても流れがなかなか翼面から剥がれません。 したがって、タービンの段数は圧縮機の段数より少なくなっています。

 このような流れ現象は、経済現象や家計に大変似ています。経済が減速するときは、抵抗に逆らって進まないといけないのですが、 経済が膨張するときは予算や収入が増え、楽であることを思い浮かべると、理解しすいかもしれません。

 タービンの流路は燃焼ガスが膨張して密度が下がっていくため広がっていきます。流れは音速を超えるところがあり、 衝撃波を発生します。そのため数値流体力学や実験を行って、流れの剥離を抑えたり、流れが淀むところを無くしたり、 衝撃波を弱めたりして、流れの損失を減らしています。




● 環境にやさしいエンジン

 燃料は比較的良質なものを使うためSOX(硫黄酸化物)の排出は問題になりません。 ガスタービンはディーゼルエンジンに比べて最高燃焼温度が低く、NOX の排出が少ないですが、 それでも以下のような種々のNOX 対策をとっています。燃焼温度が高くなるとNOX が増えますので、 燃焼温度が上がらないように燃料に対して空気を増やしたり(希薄燃焼)、逆に減らしたりする方法(過濃燃焼)や、 あらかじめ燃料と空気を混ぜてから燃焼させることによって局部的に火炎の温度が上がらないようにする方法(予混合燃焼) などの燃焼を制御する方法です。また。NOX 規制の厳しい市街地で問題になる場合は、 ガスタービンの排気ガスに対してアンモニアなどを使ってNOXを窒素と水に分解する脱硝装置を設けています。 また冷却水を使わないため、水質汚濁、温排水の心配はありません。





● ガスタービンの特異現象

 ガスタービンでは、サージング、フラッタ、燃焼振動と呼ばれる幾つかの自励振動が起きる場合があります。 これは、外から強制的な振動が加えられないにも拘らず振動が増大したり、 あるいは振動が持続する現象で、これが起きるといずれも機械が破壊したり、破損する危険性のある振動であります。

 サージングは、圧縮機の流量を減らしてくると、流量や圧力が周期的に激しく変動する現象です。 またフラッタは、翼とくに圧縮機の翼で流れが振動していないのに、流れの速度がある程度以上になると翼が振動する現象です。 これは翼に働く空気力、翼の弾性復元力、慣性力などの相互作用によって起きる現象です。翼の剛性が低いほど、 フラッタが発生する流れの速度は小さくなります。非常に剛性が小さい例としては、旗が小さな風速ではためく現象があります。 燃焼振動は、燃焼室の音響波と燃焼プロセスの相互作用によって大きな圧力の変動と熱発生率の変動が起きる現象で、 特にNOX の排出が少ない予混合燃焼で起こりやすいです。そのほかにも、 サージングに入る前段階に旋回失速という不安定な現象があります。 これは圧縮機の翼の一部で流れが失速し、その失速域が円周方向に伝播する現象で、翼に周期的な力が働くため翼が疲労し、 破損することがあります。これらの現象に対して、設計や運転で十分に注意を払い回避しています。

 以上、特異現象を簡単に説明しましたが、実際の現象は大変複雑であり、精力的な研究が続けられています。





● 広範囲の技術が必要

 燃焼、燃料、潤滑油に関しては、熱力学、伝熱工学、化学工学が、 流れに関しては流体力学、流体工学、強度に関しては、材料力学、構造力学、振動工学、材料に関しましては、 材料工学、運転制御に関しては電気工学など多くの学問を使う総合技術です。





● ガスタービンの用途

1. 発電用(常用、非常用)
2. コージェネレーション(熱併給発電):電気と蒸気をつくる
3. 機械駆動用(ポンプ、圧縮機など)
4. 舶用エンジン(プロペラ、ハイドロジェット)
5. 航空エンジン(旅客機、ヘリコプタなど)
6. 車両用エンジン(自動車、鉄道用など)
7. APU(補助動力源)
8. 空気源(圧縮空気)






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