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ターボ機械を知ろう!・・・ターボ機械
 ターボ機械って何だろう?

 水力発電所では、水を高速にして羽根に当てて羽根車を回転させ(これを水車といいます)、羽根車に連結した発電機を回して水のエネルギーを電気エネルギーに変換しています。また大雨の時には、河川の近くにある排水機場では、下水に流れ込んだ大量の水を河川に排水するために、原動機を回して羽根を回転させ(これをポンプといいます)、機械的なエネルギーを水のエネルギーに変換しています。

 このように、空気や水などの流体を用いて、機械と流体の間でエネルギー変換をする機械を流体機械といい、羽根車を回転させる形式(図1、ターボ形)と、ピストンのように往復運動をさせる形式(図2、容積形、あるいは往復動形)があります。

 前者の、回転する羽根車を介して流体のエネルギーと機械的エネルギーの間で、連続的にエネルギー変換を行う機械をターボ機械といいます。 私たちが日常目にするファン、プロペラ、タービン、ポンプ、水車、風車、ジェットエンジンなどは、みなターボ機械です。
【ターボ機械って何だろう?】

 ターボ機械は、間欠流を取り扱う往復動機械と違って、連続流を取り扱う機械であり、大容量の流体を取り扱うのに適しています。
図1および図2は往復動形とターボ形を比較したものです。圧縮機を例に取りますと、ターボ形は別名速度形と呼ばれ、速く回すと速度の2乗に比例して圧力が上がります。往復動形は、容積を縮小することで圧力上昇を行います。

 前者の例として、竹トンボを飛ばすことを考えてみましょう。竹トンボを回すと、飛行機の翼のように竹トンボの翼の下側の流れの圧力が上側より高くなり、竹トンボは上昇します。すなわち翼作用により圧力上昇があることが分かります。一方、後者の例として、自転車の空気入れを考えますと、空気入れのピストンを押すことにより容易に圧力が上がることが分かります。往復動形は間欠流なので、小流量高圧に適し容積形とよばれます。

 自然界を見渡しますと、足を出したり引込めたりして往復運動をしている動物は沢山おりますが、回転している動物はいません。回転しているのは生物の鞭毛ぐらいです。これに関して、本川達雄着[ゾウの時間ネズミの時間]では"なぜ車輪動物がいないのか"という問題を取り上げて、車輪は生物を手本にせずに人類が作った偉大な発明であること、また人間は動物の中では大変大きい生き物であり、ネズミやアリなどのように小さくなればなるほど、 サイズを相対的に小さくした車輪は小石や枯れ枝にぶつかって動きにくくなり、小回りが効かなくなるといっております。
また「なぜ空を飛ぶプロペラ動物がいないのか」に対しましても、プロペラの軸には捩りがかかり、それに耐えられる軽い素材を、動物がつくれるかどうか疑問であるとも述べております。

ターボ機械は更に偉大な発明である。

 回転するものでは古くから水車や風車があり、動力源として使われてきました。紀元前300年頃にはアルキメデスのポンプ(大きなねじを円筒の中で回して水を汲み上げる形式のポンプ)が使われ、現在も使われています。水を容器に入れ高所に運ぶ、いわゆるつるべ式揚水機は往復運動ですが、アルキメデスのポンプはこれとは異なり、連続的に回転するので多量の水が運べるようになり、揚水仕事が楽になったと考えられます。

 産業革命以後は、道具から機械の使用に移り、動力や水や空気などを多く使う時代になりました。最初は鉱山、製鉄、紡績などで、ワットの名で代表される往復運動式の蒸気機関や空気圧縮機、ポンプなどが使われていましたが、工業の発展に伴う大出力、大流量化の要求に、送電技術の実現と相まって、 ターボ機械である水力タービン、蒸気タービン、ターボ圧縮機、ターボポンプが本格的に使われるようになりました。
 その後、さらにこれらのターボ機械の技術をベースに、材料や流体の技術の発展と共に、ガスタービン、ジェットエンジンが開発され、現在では大流量化は止まり、小型軽量化し高速にして同じ流量を流す大容量化に移ってきました。
表1 限界技術の例
項 目 実用化している 機 種
ロータ周速度 毎秒700m 蒸気タービン
気体圧力 800気圧 石油増産用再注入ガス圧縮機
液体圧力 270気圧(1段) ロケット用液体水素ポンプ
真空度 10-7Pa(10-12気圧) ターボ分子ポンプ
タービン入口温度 1500度 ガスタービン
圧縮機入口温度 -269.7度 極低温ヘリウム排気圧縮機
回転数 毎分80万回転 極低温ヘリウム膨張タービン
回転数 毎分40万回転 歯治療用タービン
気体の速度 音速の2倍 蒸気タービン
 どんな特徴がある機械なの?
  1. 空気や水はもちろんのこと、地球、宇宙にあるすべてのガスや液体を対象にしています。
  2. 小さく軽く高速で回り、重さ当り大きな流量や出力を得ることができます。
  3. 信頼性が非常に高い機械です。
    図1(a)のように回転部が機械的に接触するのは軸受だけで、往復動形の様な弁がない。
  4. 限界の技術で(表1参照)、理学や工学に亘り科学の広い成果を使っています。
    • 高圧から超真空まで、高温から極低温までの流体を取り扱う。
    • 高速で回転する。
    • したがって、高温・低温、高圧・真空、そして音や振動、材料の物性、流体、熱などの物理、熱工学、流体工学、材料工学、構造力学、トライポロジ(軸受、潤滑油)、 振動工学、騒音工学、電気工学、ロータダイナミクスおよびバランシングなどの技術が必要です。
  5. ターボ機械内部の流れは、大変複雑で時々刻々変化する非定常3次元流れです。
    航空機の流れは外部流れ(航空機から少し離れたところは一様流)ですが、ターボ機械の 流れは内部流れ(翼から離れたところに壁があり、壁の影響を強く受ける)で、非定常、三次元回転流れで、外部流れの知見を応用できます。
  6. 流れが高速になると、衝撃波やキャビテーション(液体のなかに蒸気泡が生ずる)を生じます。
  7. 流れは2相流になる場合があります。
    • 蒸気の液化や液体中にキャビテーションが発生すると、気液2相流になります。
    • 気体の中に酸化スケールや異物が混入飛翔する場合や、気体を用いた固体の移送では固気2相流になります。
    • 液体を用いて固体を運搬する流体輸送では、固液2相流になります。
  8. 設計点から外れた運転をすると、異常流動が発生したり、流体振動を伴うことがあります。
    設計点付近で運転するとあまり問題は起こりませんが、設計点から大きく外れた運転をすると、流れが翼からはがれたり、キャビテーションが起こったり、動翼と静翼が干渉したり、ロータが渦の発生器になったりして、流体関連振動の原因となります。
    また、管路系を含むシステムに激しい1次元振動(サージ)や旋回失速が発生することもあり、 振動が起きると、騒音が発生したり、羽根や機械まで破壊することがあります。
  9. 流れが複雑なので、流れの解析の実施だけでは不十分で、流れのモデル試験が必要です。
    この場合、モデル試験は実機の大きさが望ましく、それが出来ない場合は大きさの影響を理論的に考慮した縮小モデルを用いて、実機の性能が確証できる試験が必要になります。
  10. 実機をつくるにはモデル試験機から決めた形状と正確に同じ形状に作る必要があります。
    そうでないと性能が出ないし、運転が不安定になる恐れもあります。そのため精度の高い製作技術を必要とする、言い換えればターボ機械は精密機械であるといえます。
 ターボ機械って、本当に重要な機械なの?
  1. 私たちが日常生活を送るのに欠かせない機械です。
    ターボ機械がなければ、私たちは水も電気もガスも手に入れられません。
  2. 21世紀の環境保全になくてはならない機械です。
    1. 温暖化ガスの少ない発電として、水力発電、風力発電、原子力発電、地熱発電があり、これらは水力タービン、風力タービン、蒸気タービンを使っています。
    2. 火力のコンバインド発電は熱効率が50%を超え、炭酸ガスの排出が少ない。
      これはガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたもので、さらにガスタービンは、ディーゼルなどの他の熱機関に比べて酸化窒素化合物(NOx)の排出が少ない。
    3. 欧州では、自動車は炭酸ガス削減のために効率の良いディーゼル車を主として使う傾向にあり、厳しい酸化窒素化合物(NOx)などの排ガス規制をクリアするためには過給機が欠かせません。
  3. 広範な分野で欠くことの出来ない機械です。
    家庭から食品、農業、バイオ、建築、化学、金属、建築、土木、化学、電気、航空、宇宙、防衛など広く利用されています。
    また素粒子研究や核融合の研究にも欠かせない機械です。
  4. 他分野への波及効果が大きい限界の技術を使っています。
    例えばガスタービンや蒸気タービンは高温のガスを取り扱うため、温度や圧力に強い材料や軸受を使います。これらの耐熱材料や高温軸受のデータは、鉄鋼やセメント業などの高温機器の設計に応用されます。
  5. 模倣の出来ない機械なので、競争相手は先進国に絞られます。
    欠点は開発に多額の費用がかかることです。技術の粋を集めてつくりますので、ノウハウが沢山あり、発展途上国が模倣してつくっても、精度が確保できず、性能が出ない。また図面を買ってつくっても、性能が出なかったり、振動や騒音が発生しても対処できない。
    新規開発の費用があまりに高いので、国際共同開発になるほどです。
  6. 高度な加工が必要であり、高いものづくり技術が養われます。
    精密な機械であり、製作にも高度な加工(3次元NC機械、レーザや放電加工機など)が必要です。
  7. システム産業ですので、産業の裾野が広く、これを利用するので価値が高いといえます。
    たとえばガスタービン発電のプラントで電気品を例に取ると、発電機、制御盤があり、その中には沢山の電気部品があり、更にそれは半導体からできています。
  8. 先進諸国は、国の威信を掛けて多額の費用と人を投入して先端技術を生み出し、また先端技術であるターボ機械の開発を行っています。
 これからどんな研究開発が必要なの?
炭酸ガス排出の削減を考えた場合、自然エネルギーの風力、水力はもちろんですが、以下の研究が必要です。

  1. 各種ターボ機械の高効率化
    効率を上げると、炭酸ガスの排出が減ります。
    ポンプ、圧縮機、タービン(蒸気、ガス)、水車などの更なる高効率化を計る必要があります。

  2. 軽量化・小型化
    材料が少なくなるばかりか輸送などのエネルギーも少なくなり、エネルギーの消費が下がります。
    このためにはターボ機械を小型にして高速で回し沢山の流体を流して、高い効率を得る研究開発が必要です。

  3. 運転範囲の拡大・安定性能化
    プラントなどで需要に合わせて、プラントを運転すると無駄がありません。このためには運転範囲が広いターボ機械が求められます。
    運転範囲が広くなると、性能低下や流れの不安定を招きやすくなるので、従来より効率が高く流れの安定さを増す研究開発が必要です。

  4. 高信頼化
    トラブルを起こすと人、金、物など無駄なエネルギーを沢山使いますので信頼性の高い機械をつくることが必要です。
    これは生産現場にも言えることで、不良品を作らないことです。 不良品は炭酸ガスの塊と言ってもよいくらいです。
    このように品質管理は大事であり、精度の検査や耐久試験などの品質管理も大事です。
    ターボ機械の設計段階で、より安全で高い性能を確保できる機械の研究開発が必要です。

  5. 蒸気タービン、ガスタービン効率の向上
    このためにはタービンの入口温度、圧力などを上げる研究開発が必要です。
    蒸気タービンの蒸気条件 600℃、250気圧 →700℃、350気圧(研究段階)→ガスタービン入口温度 1500℃ →1700℃(研究段階)→